タイフーン・グエン

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タイフーン・グエン

 ――ダンジョンは芸術だ。  今から百数十年ほど昔に、とある魔術師がこう言い遺したという。  そんなことはどうでもいい。なんでもいい。どうしてこうなった。  澱んでかび臭い空気と闇に満ちた迷宮の片隅で、少年は途方に暮れていた。彼が意気揚々と生まれ育った街を旅立った日からまだ半年にも満たない。それが何故に今、こんな所にいるのか。こんなことをしているのか。それを思うと悔しさと情けなさで胸がいっぱいになる。  不運だったと割り切ってしまうことも必要なのだろうが、それでもやはり繰り返し思ってしまうのだ。  なんでこんな目に、と。  もちろん、他に選択肢がないわけでもなかった。もっと安全な場所で、例えばどこか下働きにでも雇ってくれそうな店でも見つけて働けば、こんな危険な真似をせずとも日々の食い扶持くらいは稼げるだろう。  自分を不運と割り切り、失った全てをあきらめるのであれば、そんな真っ当な道もあるのだ。  冗談じゃない――少年はそう思う。こんなところで終わるのは嫌だ。そんな簡単にあきらめるくらいだったら、最初から故郷を離れるような真似をしたりしない。     
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