タイフーン・グエン

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 地道に働くことに比べれば実入りもよく、運が良ければ一攫千金を狙えるという話を信じて地下迷宮へ出入りするようになって、もう三ヶ月になろうか。幸運が舞い込むことはまだなかったが、代わりに不運が訪れてもいなかった。  既に不幸のどん底と言ってもいい状態ではあったが、ここでの不運とは概ね『死』そのものを指すのだ。本当にこの道を進み続けることが正しいのか、少年は繰り返される疑問と葛藤をむりやり押さえ込み、薄暗い回廊を進んでいった。  彼がいる表層部中央回廊は広大な地下迷宮のほんの入り口で、ある程度の経験を積んだ探索者であれば、命の危険にさらされるようなことは滅多にない。  それにも関わらず少年は獲物を狩るために必死にならざるを得なかった。なぜなら彼にはろくな戦闘経験がなかったからである。  少年にとってこの地下迷宮の探索は、たとえそれが初心者向けの表層であったとしても毎日が常に死と隣り合わせといってよかった。ひとつでも判断を誤れば、この湿った回廊に骸を並べることになるだろう。  なにしろ、まず装備が貧弱だった。なめし革のベストは丈夫そうだが、彼が身に着けているものは旅装に使われるごく一般的な衣服である。右手にやや小振りのナイフを持ち、左手にはよく使い込まれた大きなフライパンをぶら下げていた。     
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