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刑天
「まさか、りえの恋人までガードしろってゆーんじゃないだろうな?」
俺はトゲのある口調で言った。
「カマ、敬語を使いなさい?」
尾形にたしなめられた。
「小田さんだって毎回タメ口じゃないですか?何で俺ばっかり?」
「ばっかり食べはやめなさい」
寛子がわけのわからないことを言う。
猿山がゆーにはりえと武彦を別れさてほしいそうだ。護衛と別れさせ工作、2つの任務をこなさなくてはイケナイ。
「川上の職業は?」
「よくは知りませんが、りえがゆーにはクラブでボーイをしているそうです」
川上は見るからにロクでもなさそうな男だ。
「教師だったらもう少しまともなのとつきあえばいいのに…………」
寛子が一人ごちた。
俺は依頼のシーンを回想していた。
尾形は倉田って男をマークしていた。
倉田は猿山に被害を受けていたサラリーマンだ。
猿山は結婚詐欺にも手を染めていた。
俺は昔から怪談はくだらないと思っている。
クビリオニなんているわけがない!
おばあちゃんが寝る前にのっぺらぼうの噺をしたことがあった。
「こんな顔かい?」
「そんなの作り話に決まってんだろ?子供だまして罪の意識は感じないのか?」
「のっぺらぼうよりタケちゃんの方が怖いねぇ」
倉田がクビリオニである可能性はある。
猿山の過去を知った倉田は遺族に罪を着せる作戦を立てた。
他の2件は猿山に気づかせるために行った。
首なしには首なし、鼻削ぎには鼻削ぎ…………ハンムラビ法典を彷彿とさせる殺人を行う。
俺は自分の推理を尾形たちに聞かせた。
寛子が鼻で笑った。
「カマさんって詐欺にあったからって関係のない人巻き込んでまで犯人殺しちゃうの?まっ、カマさんにはそんな勇気ないか?女みたいな性質だもんね?」
「女みたいなのは名前だけだから?寛子ちゃん、気持ちよくさせたげようか?」
小田は猿山を尾行していた。
猿山はサングラスをしていた。目をくり貫かれないタメにだ。真夜中だとゆーのにどこに行くんだ?
アパートを出て川縁を歩いている。
アーチ橋の袂まで来たときだった。
巨大な影が前から近づいてくる。
小田は息を飲んだ。首のない武者がそこには立っていた。鉞を担いでいる。
「けっ、刑天!?」
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