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「ねえー、ここってどう解くんだったっけ?」
「あ? ――これ、さっきやっただろ」
諷杝は丸テーブルの上に突っ伏した。
明日からテスト週間が始まる。泣く泣く勉強している次第である。
そんな諷杝を教えているのは、学年では一つ下になるルームメイトの也梛だ。彼は日頃から予習復習をきちんとこなしているので、諷杝の家庭教師役を引き受けても自分のテストはバッチシだ。
「あー、也梛の頭が欲しいなあ。特に国語―」
「何バカなこと言ってんだ。てかさすがに俺も二年の内容はそれほど分からんからな。一年のはだいたい一通りやってるから……」
也梛が肩をすくめる。
「そっか。君は一年の内容かぶってるんだった」
「そーそー。この学園のシステム上仕方ねーしな――って、それはどーでもいいんだ。ほら、さっさとやれ。消灯時間過ぎるぞ」
ここの寮はテスト期間だろうが消灯時間は十一時と決まっている。
絶対自宅生と比べて不公平だ。――と言って真面目に集中して取り組めるかはまた別問題だが。
「どうしよー、絶対全部間に合わないー」
「しゃーねーな。ズルズル先延ばしにしてきたバツだよ。山勘でもすれば」
「也梛はドコ出ると思う!?」
「知らねーよ。てかそれでハズれたら俺のせいにすんだろ?」
「当たり前じゃん」
諷杝がうんうんと頷くと、也梛ははあとため息を吐いた。それでも律儀な彼は諷杝のノートをパラパラと捲る。しかしすぐに、
「……せめてノート見れば先生のクセも分かるかと思ったけど……何だ、コレは」
也梛が眉をひそめてノートを諷杝の前に突き出した。
諷杝が授業中にとったノートの中身は、途中までだったり落書きしてあったり、音符が踊っていたりした。
「いやー、眠かったから眠気覚まし的に遊んでみたんだけど……上手くない?」
「お前はアホかっ!! 授業聞く気なしか!?」
「んー、アホなのは十分承知してるつもり……」
「認めるな! バカ! とりあえずやれるトコまでやるぞ!」
ったく何で俺が、とか何やらブツブツ言いながら、也梛が教科書を手にする。
消灯まで後一時間ちょっとだ。
「間に合わない分は明日の朝だ!」
スパルタ家庭教師のルームメイトだった。
終
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