(1)フウリの家庭教師

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「ねえー、ここってどう解くんだったっけ?」 「あ? ――これ、さっきやっただろ」  諷杝(ふうり)は丸テーブルの上に突っ伏した。  明日からテスト週間が始まる。泣く泣く勉強している次第である。  そんな諷杝を教えているのは、学年では一つ下になるルームメイトの也梛(やなぎ)だ。彼は日頃から予習復習をきちんとこなしているので、諷杝の家庭教師役を引き受けても自分のテストはバッチシだ。 「あー、也梛の頭が欲しいなあ。特に国語―」 「何バカなこと言ってんだ。てかさすがに俺も二年の内容はそれほど分からんからな。一年のはだいたい一通りやってるから……」  也梛が肩をすくめる。 「そっか。君は一年の内容かぶってるんだった」 「そーそー。この学園のシステム上仕方ねーしな――って、それはどーでもいいんだ。ほら、さっさとやれ。消灯時間過ぎるぞ」  ここの寮はテスト期間だろうが消灯時間は十一時と決まっている。  絶対自宅生と比べて不公平だ。――と言って真面目に集中して取り組めるかはまた別問題だが。 「どうしよー、絶対全部間に合わないー」 「しゃーねーな。ズルズル先延ばしにしてきたバツだよ。山勘でもすれば」 「也梛はドコ出ると思う!?」 「知らねーよ。てかそれでハズれたら俺のせいにすんだろ?」 「当たり前じゃん」  諷杝がうんうんと頷くと、也梛ははあとため息を吐いた。それでも律儀な彼は諷杝のノートをパラパラと捲る。しかしすぐに、 「……せめてノート見れば先生のクセも分かるかと思ったけど……何だ、コレは」  也梛が眉をひそめてノートを諷杝の前に突き出した。  諷杝が授業中にとったノートの中身は、途中までだったり落書きしてあったり、音符が踊っていたりした。 「いやー、眠かったから眠気覚まし的に遊んでみたんだけど……上手くない?」 「お前はアホかっ!! 授業聞く気なしか!?」 「んー、アホなのは十分承知してるつもり……」 「認めるな! バカ! とりあえずやれるトコまでやるぞ!」  ったく何で俺が、とか何やらブツブツ言いながら、也梛が教科書を手にする。  消灯まで後一時間ちょっとだ。 「間に合わない分は明日の朝だ!」  スパルタ家庭教師のルームメイトだった。 終
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