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今日からテスト一週間前のテスト期間に入る。
矢㮈は六限終了と同時に、自分の机の上に突っ伏した。
正直言って、今回のテストはヤバい。この前までバイオリンに熱中してたから、余計にヤバい。勉強そっちのけで、バイオリンばかりやっていたのだ。
家でやるよりかは学校でやろうと、放課後の教室に残る。矢㮈の所へ荷物を持った千佳がやって来た。
「あれ? 千佳ちゃん帰るの?」
あわよくば一緒にやってもらえないかと誘おうとしたのだが。
「ううん。部活。ほら、うちんとこ新人戦で活躍したから特別練習あるの」
へえ、それはそれは……。
千佳が「頑張ってねー」と手を振って教室を出て行く。
矢㮈がため息と共に英語の教科書を出すと、両側から声がかかった。
「もしかして笠木さん勉強?」
「良ければ一緒に」
松浦と衣川だ。ホットケーキパーティー以来、矢㮈とも仲良くなっている二人だ。
「え、良いけどあたし教えるとかムリだよ? 逆に教えてもらいたいくらい……」
「あー、それは大丈夫。あそこに秀才君がいるから」
松浦が振り返って、今にも帰ろうとしていた高瀬を指さす。衣川がにっこり笑って高瀬を引きずって来た。
「一体何のつもりだ」
無理やり連れてこられた高瀬が仏頂面で言う。松浦がニヤリと笑った。
「オレらの勉強会、手伝ってくれるだろ?」
「はあ? 何で俺がお前らなんかのまで……っ」
「お前らなんかのまで?」
「――いや、何でもない」
高瀬は黙ったが、矢㮈はその訳を知っている。彼はルームメイトの勉強指導もしているのだ。
「はい、座って座ってー」
松浦が、矢㮈の隣の席に高瀬を無理やり座らせて、前の席の机を二つ向かい合わせにした。小学校の時の給食風景だ。そして、
「じゃ、まずは英語から行こう。コレ分からない人―、ハーイ」
早速、高瀬以外の三人が全員手を上げる。
「……ちょっと待てお前ら。コレまだ中学の時の範囲だろ!?」
高瀬が問題を見て愕然とする。基本文法問題である。しかしそんなことを言われても、分からないものは分からない。
「こんなじゃ英語だけでもいつ終わるか分かんねえぞ!? つーかそもそもどうやってこの学園の入試をパスした!?」
「お願いしまーす、秀才高瀬君!」
矢㮈たちは三人でハモった。
終
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