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「あー、もう脱いじゃったのかあ」
高瀬の手にあるオオカミの着ぐるみに、千佳がデジタルカメラを片手に項垂れる。どうやら撮影するつもりだったようだ。高瀬が半歩下がって、どこかほっとしたような表情をした。
だがすぐに千佳は顔を上げてふっと笑う。
「まあ、もう既にいっぱい撮ったんだけどね」
「……それは隠し撮りか?」
「フフフフフ。スーパーテクニックよ」
高瀬の問いに答えていない返答をし、千佳がカメラを大事そうにしまいかけて――ふいに思い出したように矢㮈をふり返った。
「そうそう。笠木と写真撮ってなかったから、撮ろうと思ったんだった」
千佳は高瀬にカメラを渡した。
「高瀬君、お願いして良い?」
「――良いのか? 俺はこのカメラを壊すかもしれないぞ」
高瀬が半ば本気で訊く。すると千佳はにっこり笑った。
「実は他の子にも撮ってもらってるから、写真は焼き増ししてもらえるの。それに、それ壊したら高瀬君はあたしの言うこと聞かなきゃならなくなるよ?」
「……確かに」
高瀬がため息を吐いてカメラを持ち直す。
つまり、カメラを壊したとするともちろん悪いのは高瀬の方なわけで、弁償なり何なり、千佳に強く出られなくなるということだ。
(……何なの、この二人)
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