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「そんな! 死人を見世物にするなんて!」
女と男は軽やかな笑い声をあげた。
「とどめを刺すよりはましでしょう!」
女が言う。
「あの瓶に入れられたら、その魂はそこから出ることはできなくなる。そして、瓶が割れたらその魂は消えてしまうのです」
「え、で、ではあの女の子は……」
ゴルフクラブで殴られる前、瓶を落としてヒビを入れてしまったことを思い出した。
羽野の質問に、答える女の口調はいかにも忌々しそうだった。
「ええ、消えてしまいました。あんないい商品、なかなか無いのに。まだまだ稼げるはずだった。やっぱり、あんなネズミみたいな奴にレンタルするんじゃなかった」
ひかえていた男が、「売るだけでなく、レンタルもするんですよ」と補足をした。
「でも、いいじゃないですか。店長が代りに商品になってくれたんですから」
男は視線で店長の入った瓶を指差した。
「あの男は、大勢に恨みを買っていたといます。今の姿を肴(さかな)に酒を飲めるならいくらでも払うという奴が出てくるでしょう」
瓶の中では店主が声もなくのたうちまわっている。
「でも、店長だけの稼ぎじゃねえ。もとが取れないわ」
そこで女は微笑みを浮かべた。
「美女の他にも人気のジャンルがありまして」
女が視線で男に指示を出した。
男がランタンの光の届かない闇から、バッグを運んでくる。床に置いたとき、金属製の、重たい物が入っている音がした。
「まあ、映画でいうスプラッタというんですかね。事故で悲惨な外傷を負って死んだ者、事件に巻き込まれて死んだ者……そういった幽霊の観賞を楽しむお客様もいるのですよ。というわけで、あなたにはあの少女の幽霊をだめにした弁償をしていただきますね」
男はバッグを開けた。
どんな拷問器具が出てくるのか知りたくない羽野は顔をそむけた。例えこれからどんな物か、その身で知るはめになるとしても。
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