第五章【夢一夜】

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「文香……文香……」  うわ言のように、一紫は彼女の名前を呼んだ。 「一紫さん……」  求められている実感は、さらに女の心を喜びで満たした。  やがて。  二人は相手の名前を呼びながら、同時に達して、果てた。  静まりかえった部屋で、文香は泣きながら目を開き、男の方に向き直った。  一紫はその体を、無言で抱き締めた。  そのまましばらく、二人は動かずにいた。 「一紫さん……」 「ん?」  文香は顔を上げ、濡れた顔のまま、呟くように言った。 「愛してます……」 「……うん。俺も、愛してるよ……」  望む答えを得て、文香は男の胸に甘えるように頬をすり寄せて、言った。 「前に、言いましたよね。私は、変わってるって……」 「え? ああ……」 「でも、実は意外と、平凡な女かもしれません……」 「え……」  意外そうな男の顔を見て、文香は恥ずかしそうに呟いた。 「一紫さん……、私と、一緒に暮らしませんか……?」
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