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昨日から恋人の様子がおかしいことは、文香も薄々気付いていた。
「一紫さん……?」
彼女は不思議そうに男の顔を覗き込んだ。
自分を真っ直ぐに見つめる澄んだ瞳を見つめ返し、一紫は「いや……」と呟いた。
「とりあえず、お母さんの許しも得たんだ。俺達のこれからの目標は、とにかく幸せになることだ。そうだろう?」
「ええ、そうですね。……でも、夢みたい。もうすぐ一紫さんと結婚出来るなんて……」
「夢にしないで。俺は君のドレス姿を見るのを凄く楽しみにしているんだから」
一紫は笑いながら文香の頬に触れ、その唇にそっとキスをした。
ただそれだけの触れ合いで、文香は何を気にしていたのかも忘れ、心底嬉しそうに微笑んだ。
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