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君の窓
僕は今、静まり返った墓地に来ている。
あたりに街灯などない。
真っ黒い墨を流し込んだ水面のように闇がよどむ中、
ぽつぽつと四角い死の証が点在する。
生きていた証を刻んだ、死のモニュメント。
僕はある墓の前で足を止めた。
僕は墓の石段を上がり、その死の証の前にひざまずいた。
刻んだ生の証を指でなぞる。
指を通して君の感覚が、蘇りはしないかという妄想にかられたけど、指先からは
冷たい死しか感じられなかった。
僕はあきらめの悪い男だ。
納骨堂の石をずらし、僕は彼女のお骨を胸に抱いた。
許されることなら僕は、彼女の形を永遠に残しておきたかった。
そう、どこか遠い外国の精巧なミイラのように。
しかし、日本の今の法律はそれを許してはくれない。
彼女の不在が僕を八つ裂きにした。
バラバラの僕を拾い集めてみたが、僕はそんな生活に疲れてしまった。
死のうと思ったのだ。
もう僕はこれ以上僕の形を保つ事はできない。
僕は鴨居の上にあいた欄間の隙間にロープをかけ、輪にした。
そして、あとは首をそこにかけて、椅子を蹴るだけ。
僕は意を決した。ふと、上を見ると天井に穴が開いていた。
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