こぼれた涙

3/16
前へ
/317ページ
次へ
「ねぇ、みのり」 「ん?」 「あのさ」 グラウンドを見つめたまま、アリサちゃんがそう言って話し始める。 「隼人と、うまくいってる?」 「えっ?あぁ、うん。いってる…と思う」 「そっか。でもさー、何か隼人、最近元気ないんだよね」 「えっ?」 「学校ではいつも元気だよ?みのりといる時も、多分いつも元気に笑ってると思う」 「うん…」 「でも、最近家の前とかで会うといつもため息ばっかついてて。全然笑ってなくて…あいつ」 アリサちゃんの言葉に何故だか胸がキュッと締め付けられていく。 「あんなあいつ見たの初めてでさ…何か、ごめん。言わずにいられなくて」 アリサちゃんはそう言うと、少し黙り込んで。 だけど言いにくそうに、また口を開く。 「私がこんなこと言うのは間違ってるって分かってるんだけど。もし隼人のこと好きじゃないなら…早いことフッてあげてくれないかな」 「えっ…」 「違うならいいの。みのりも好きで付き合ってるなら全然いいの。ただ、もしそうだとしたら、どうせ傷つくならその傷は浅いうちの方がいいと思うんだ」 どうしてだろう。 何で言えないんだろう。 そんなことないよ、好きで付き合ってるんだからって。 どうして答えることができないんだろう。
/317ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1685人が本棚に入れています
本棚に追加