こぼれた涙

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涼から岡崎さんと別れようと思ってると聞かされたあの日から、あたしはずっと変だ。 真鍋といても、どこかいつもうわの空で。 気が付いたら涼のことばかりを考えてしまっていた。 ひょっとしたら、真鍋はそんなあたしの気持ちに気が付いてる? いや、まさか。そんなわけはない。 あたしは真鍋と付き合っているという自覚はちゃんとあるし、涼が岡崎さんと別れようとしているからといって、真鍋との関係が変わるとは思っていない。 それなのに、アリサちゃんはどうしてそんなことを言うんだろう。 「ごめん、何言ってんだろ私」 アリサちゃんはそう言うとバツが悪そうに笑って続ける。 「なんか、幼なじみっていっても、隼人は弟みたいでさ。そんな弟みたいな隼人が元気ない姿は黙って見てられなくて」 「…うん」 「って。なんかお節介なお姉ちゃんみたいだよね、あははっ、ウザ!私」 そう言いながらアハハ、と笑いとばす。 アリサちゃんと真鍋も幼なじみ。 だからこそ、大切なんだ。 アリサちゃんと真鍋の間には恋心みたいなものはないようだけど。 それと同じくらいの繋がりや想いがあるんだろうと思った。 「さっ、じゃあ続きやろっか!」 アリサちゃんは何もなかったかのようにパッと明るくなって、ペンキ塗りの続きを始めて行く。 そしてあたしも、複雑な胸の内を隠すように笑顔でまたペンキを塗り始めた。
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