こぼれた涙

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「今帰りか?」 「…涼」 帰っていく真鍋の姿がちょうど見えなくなった頃だった。 隣の家の玄関が開き、涼が家から出て来た。 「うん、文化祭の準備で遅くなっちゃって」 「…そっか。看板作りだっけ?大変そうだな」 涼はそう言いながら自転車の鍵を開け、そしてゆっくりとまたがる。 「どこか行くの?」 「あぁ、うん」 もしかしたら、岡崎さんのところかな、なんて妄想が勝手に頭に浮かぶ。 涼は岡崎さんと別れようと思っていると言っていたはずなのに、まだ別れてる様子はないし。 学校でも何ら変わりなく二人でいる姿を見かける。 ひょっとしたらあの時二人はケンカでもしていて、涼は勢いであんなことを口にしていたのかもしれない。 あたしも突然のことで驚いて、理由も聞けていなかったから。未だ何もわからないままだ。 「そっか…暗くなってきたし気をつけてね」 「おう」 「じゃあ」 そう言って自転車をとめ、玄関へと歩き出した。 「お前も行くか?」 だけど涼のその声で、すぐに足が止まる。 「行くってどこに?」 「ん?DVD借りに」 数秒、考えた。涼と一緒に行く理由は見つからない。 借りたいDVDも特にないし、真鍋も今帰ったばかりだ。 二人でいるところをもし見られでもしたら… 頭ではそう思っているのに、体は違う動きをする。 「行く!ちょうど行きたかったの」 口からはそんな言葉が出て、足は勝手に進んで。 玄関を開けてカバンを置きにいくと、私はまたすぐに家から出た。
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