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すると、一体どういう風の吹き回しなのだろうか。
「後ろ、乗ってくか?」
涼が珍しくそんなことを言ってきた。
「うん!」
あたしは急いで涼の自転車の後ろにまたがった。
涼の気が変わってしまう前に、早く乗ってしまわないとと思ったからだ。
自転車が、ゆっくりと走り出していく。
「なんか一気に肌寒くなったな」
「もうすっかり秋って感じだもんね」
目の前の涼の背中を見つめながらあたしがそう答えると、呟くように涼が言う。
「そうこうしてるうちにすぐ冬になって…あっという間に春になってんだろうな」
何故か寂しそうに、ぽつりとそう言った。
すぐそばにある涼の背中が、また少し大きくなったような気がした。
「涼、背、また伸びた?」
「ん?分かるか?172になったぞ」
「すごいじゃん、また伸びたね」
「そうだな」
涼の言葉を聞きながらその背中を見上げると、また伸びたんだ、と寂しいような複雑な気持ちになった。
中2まではあたしよりチビだった涼。
それがあたしが知らないうちに、涼の背はどんどん伸びていて。
目の前にいるのに、すごく遠くに感じた。
涼の背が伸びていくごとに離れていってるような、そんな気がした。
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