つぶやき始めました!

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* 拓人が自宅マンションに帰ると、なんだか、すごいことになっていた。 「ほら、いくちゃん。笑ってぇ。こっち向いて? 写真とろ?」 「…………」 「ねぇ、また299のお洋服、買ってあげるから! お母さんね。いくちゃんなら、アイドルになれると思うんだ。 でもね。でもね。そのためには、もうちょっと笑えるようになれないとダメだと思うのね。だからね。ちょっとだけ、笑う練習してみよ?」 無表情で、かたまっている郁のまわりを、スマホ片手に古都子がウロウロしている。 シャッター音が連続で、なり続けている。 そういえば、郁が二、三さいのころに、古都子が言っていた。 「ねえ、拓人さん。いくちゃんって、カワイイよね。将来、アイドルになれるよね」ーーと。 いや、その前、まだ妊娠中に、こんなことを言ってたような気もする。 「わたしね。拓人さん。男の子がほしいなぁ。息子をアイドルにするのが夢なのよねぇ」ーーと……。 古都子のあれは、冗談ではなかったのだ。 今になって、それらが、すべて本気で発言されていたのだと、拓人は理解した。 これは、マズイ。そんな気がする。 「ことさん。そんなのは、まださきのことだよ」 「さきじゃない。ジュニアの子なんて、みんな、十二、三さいまでには事務所と契約してるんだから。いくちゃんも急がさないと」 「それにしたって、郁の将来は、郁が決めることだ。親が口出しするのは、子どもが悪いことをしようとしてるときだけでいい」 古都子は、だまった。 たぶん、「いいもん。勝手に履歴書送っちゃうもん」とかなんとか、考えてるに違いない。 こまった人だ。でも、そこがカワイイのだが。 自分に素直で、むじゃきで、明るい。 わが家の太陽だ。 「あんまり、郁をこまらせないようにね」 「わかった。でも、SNSはいいよね?」 「郁がイヤでなければね」 「いいよね? いくちゃん」 「…………」 長い間がある。 拓人は緊張して、郁を見つめた。 「……ちょっとなら」 ほっとした。 息子が許容しているなら、まあいいだろう。 「ことさん。だからって、写真は撮りすぎないようにね」 「はーい。わかった」 ほんとに、わかってるのかどうか。 不安だ。
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