4月1日 龍宮《たつみや》高校始業式

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4月1日 龍宮《たつみや》高校始業式

その人は、春の風とともにやってきた。 始業式では、新しく配属された先生に混じって、図書室の司書も紹介された。 「新しく配属されました、司書の浦嶋千晶です。よろしくお願いします。」 ”ぺこり”と音がするように、直角に。 「元気な人だなぁ」と思ったけれど、ちょっと心配。 だって、この龍宮高校の図書室の司書は、3年連続で毎年変わっているのだ。 少しざわついていたのは、生徒だけではなかった。 「あんな若い女の先生で大丈夫なんですか?」 教員の間からも、心配する声があがるのは無理がないだろう。 3年連続で、毎年新しい司書が配属されているのも異例だ。 そのうえ、昨年度の司書は、1月から来なくなり、年度末とはいえ、3ヶ月間も無人だったのだ。 それと言うのも、「出る」というのだ、幽霊が。 だがしかし、具体的なことは、なにもわからない。 事実としては、3年連続毎年司書が変わっていること、その中には男性の司書もいたこと、皆「幽霊が出る」と言っていたこと。それだけだった。
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