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「いや、やらねえわ。俺んち金無いし。」
そうか、と呟いて石田は口を閉じた。
中学最後の試合だったのにあっさりと事は進む。
学校につくとすぐに最後のミーティングも終わり、解散になった。
家に帰ってもなんの変化もない。
シャワーを浴びて夕食を食べ、翔はすぐに自分の部屋に入った。
――明日から何しよ…。
仮にも真剣にやってきた野球が明日からできない。
――高校受験か…。どうすっかな~。
そんな事をうだうだと考えていると、ベッドに置いてあったケータイが鳴りだした。
時刻は22時。
――うわ、もうこんな時間かよ…。
無駄にした時間を後悔しながら翔は電話にでた。
『おう、翔!俺だ!』
出た途端に響く大きな声。
翔は顔をしかめてケータイを耳から離す。
「うるせえよ哲也。トーンを落とせ!」
『悪い悪い!それはそうと、翔!俺推薦貰った!』
「推薦!?試合終わったの今日だぞ。」
『前から誘う予定だったらしい。俺、桜都高校で野球やるわ!』
桜都高校と言えば甲子園常連の名門校。
――あいつ、あんなとこから推薦かよ。
「そうか!良かったな!じゃあ俺疲れたから寝るわ、じゃあな!」
『おい、待て翔!お前にも…。』
石田の言葉を最後まで聞かず翔は電話を切った。
心の中はむなしさでいっぱいになった。
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