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夜、ベッドの中でぼんやりとした頭を動かす。
――今なら哲也や瑞希にあんなことを言った理由が分かる。
翔は体を起こして外を見た。
今夜は月が綺麗に見える。
――俺は、俺は哲也に嫉妬していたんだ。
なんでもそつなくこなし、誰にでも認められる。
俺もああなりたかったんだ。
――みっともねぇ……。
つくづくそう思う。
――あいつは俺に道を与えてくれたんだ。
「情けねえとこ見せたな…。なんか借り作ったみてーだし…。」
独り言を言いながら窓を開ける。
――返さねえとな、あいつが一番喜ぶ形で。
少し生暖かい風が翔の髪を揺らす。
どうするか、そんなことは悩むことじゃなかった。
すでに答えは出ていた。
「綺麗だな……月。」
感傷的になった自分が急に恥ずかしくなった。
「……きも。」
一つ悪態をついて翔は窓を閉めた。
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