1775人が本棚に入れています
本棚に追加
そして更に、月日は流れる。
ピリピリしていたムードが終わった。
受験終了。
そう、もう中学校に来るのもあと三日。
伊藤は一般で桜都を受けたらしい。
テニスは辞めて野球部のマネージャーになるんだ、と宣言していた。
勘のいい諸君は気づいただろうか?
石田哲也、伊藤瑞希。
新たなカップルが誕生していた。
そんなコトもあってついに翔達は卒業式を迎える。
三年間の思い出が頭を過ぎる。
翔は目尻に浮かぶ涙を誰にも見られないように拭った。
そんな式も終わって、皆三年間すごした仲間と思い思いの別れを過ごす。
―――――――‥‥‥
―――――‥‥
「翔。ついに始まるんだな。俺達の夢が。」
「ホントだね~。ちゃんと練習しっかりやりなよ~二人共!」
「なぁ、俺ものすごい居ずらいんすけど…。」
「なんで~?そうでもないでしょ!」
翔の言葉に伊藤は不思議そうに首を傾げる。
――なんでって…。
カップルと一緒にいる俺の気持ち考えろよ!
「もうしばらく会えなくなるんだ。居りゃあいいだろ。なあ瑞希?」
「そうよねぇ~!」
石田と伊藤は二人の世界に入っていく。
――こ、このバカップル…!
「いやッ、やっぱ俺ちょっとはずすわ…。」
そう言って逃げるように走り出す。
向かった先はグラウンド。
ゆっくり中に入って一歩一歩踏み締めて歩く。
――ここにも世話になったな…。
後ろで声が聞こえる。
「翔~~!これから打ち上げ行くぞ!」
クラスの男子が翔を呼ぶ。
「おう!」
春の日差しが少し温かく穏やかな今日、3月15日。
俺の中学生活が終わり、高校野球という舞台に足を踏み入れた日。
たくさんの期待や希望を胸に、俺は今の仲間の元に走った。
最初のコメントを投稿しよう!