あとは進むだけ

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そして更に、月日は流れる。 ピリピリしていたムードが終わった。 受験終了。 そう、もう中学校に来るのもあと三日。 伊藤は一般で桜都を受けたらしい。 テニスは辞めて野球部のマネージャーになるんだ、と宣言していた。 勘のいい諸君は気づいただろうか? 石田哲也、伊藤瑞希。 新たなカップルが誕生していた。 そんなコトもあってついに翔達は卒業式を迎える。 三年間の思い出が頭を過ぎる。 翔は目尻に浮かぶ涙を誰にも見られないように拭った。 そんな式も終わって、皆三年間すごした仲間と思い思いの別れを過ごす。 ―――――――‥‥‥ ―――――‥‥ 「翔。ついに始まるんだな。俺達の夢が。」 「ホントだね~。ちゃんと練習しっかりやりなよ~二人共!」 「なぁ、俺ものすごい居ずらいんすけど…。」 「なんで~?そうでもないでしょ!」 翔の言葉に伊藤は不思議そうに首を傾げる。 ――なんでって…。 カップルと一緒にいる俺の気持ち考えろよ! 「もうしばらく会えなくなるんだ。居りゃあいいだろ。なあ瑞希?」 「そうよねぇ~!」 石田と伊藤は二人の世界に入っていく。 ――こ、このバカップル…! 「いやッ、やっぱ俺ちょっとはずすわ…。」 そう言って逃げるように走り出す。 向かった先はグラウンド。 ゆっくり中に入って一歩一歩踏み締めて歩く。 ――ここにも世話になったな…。 後ろで声が聞こえる。 「翔~~!これから打ち上げ行くぞ!」 クラスの男子が翔を呼ぶ。 「おう!」 春の日差しが少し温かく穏やかな今日、3月15日。 俺の中学生活が終わり、高校野球という舞台に足を踏み入れた日。 たくさんの期待や希望を胸に、俺は今の仲間の元に走った。
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