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「おい!そこ声出てねぇよ!やる気あんのか!!」
「お前はもっと脇しめてバットふりな!」
「送球高ぇよ!そんなんでアウトとれるわけねえだろッ!」
様々な声、いや罵声とでも言うべき声がグラウンドを駆け巡る。
翔が入学してからもう二ヶ月がたとうとしている。
この二ヶ月は地獄だった。
いかに冬の間練習したとはいえ、こっちは自主練。
あっちはしごき。
量、そして質の違いが半端じゃない…。
最初は練習について行くだけでも大変だった。
ここで少し月影高校野球部の紹介。
部員はザッと30人くらい。
数が他の学校よりも少なめ。
これは最近できた新学校ってこともある。
なによりまだ創校四年。
野球部ができたのは三年前。
今の三年生が自ら立ち上げた部活である。
三年生は9人。
全員プロ級に上手い。
レギュラーを張るのはこの9人。
そして二年生が11人。
一年生が9人。
そして、グラウンドの端でバットを持ち、鋭い視線を向ける男。
歳は20歳後半くらいだろうか。
凛々しい顔つきには似つかわない眉間にはっきりと刻まれた皺。
その男が声を発する。
その声は低く重みのある、しかしよく透る声だった。
「総史、シートノックだ。」
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