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「渡瀬 忠、だよな? お前、スマホ持ってる?」 クラスのリーダー、田尾 松陽が座っている俺の目の前に立つ。 その後ろには、委員長の 山本有さん。 俺の名前を確認した割には、いきなりお前、扱い。 でも、リーダーだから当然スルー、俺もスルー。 「持ってるよ」 「良かった、じゃあ、今、ライン交換しよ。クラスライン、お前と中村と佐伯だけ入ってなかったんだよ」 「あ、っそ」 俺は、初めての『アドレス交換』に手を震わすも、『面倒くさいけど、しゃーねーな』の態度で携帯を取り出した。 「良かったよ。お前以外の2人、ガラケーでさー、ライン入れられないらしくて…」 それじゃ、自分は最後の1人だったわけだ。 すげぇ、レアじゃん、俺。 なんかもったいなくね? レアじゃん、かっこよくない? けど、こんなこと言ったら『出たよ。天邪鬼の目立ちたがり屋』とかって引かれるのが目に見えてるから、大人の俺は素直にアドレスを交換した。 そしてこの瞬間から、俺は正真正銘、完全なるモブへと飛躍することが決定した。 それじゃ、と去っていった2人の後ろ姿を見ながら、結局委員長の山本有さんとは一言も、というか目さえも合わなかったと、気づく。 んで、山本さんどころか、きっと田尾ともこれっきり話すこともなく、1年間が過ぎ去るのだろう、と悟った。
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