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こんなふうに、時々私の意識は航平と一緒にいた時間をさかのぼる。
それはつらいことを思いだす。けど、そうすることで自分の心を落ち着かせ、整理していく過程なんだと感じる。
私が実家に戻ってから三週間がたった。
毎日、私は父母の弁当を作り、ハウスまで届ける。
手伝えることがあればそれをやり、そのまま夕食の買い物をしたりする。
そんな毎日だった。
そのうちに、いちご狩りのホームページを作成しようなんて考えていた。
今夜は鮭の味噌マヨ焼きにしようと思う。
手頃な生サーモンが手に入ったからだ。
その帰りにまた、いちごのハウスへ寄った。
するともう母はプレハブのシャッターを閉めていた。
「あれ、もうおしまい?」
まだ、三時だ。
日曜日だけど、どんよりとした雲に覆われて、もう夕方のように感じる日だった。
だから、客も少ないらしい。
「もうこの時間なら県外からはこないし、予約のお客さんも来ちゃったしね。少しくらいのいちごなら家へ持って帰る。そうすれば常連さんはうちの方へ寄ってくれるから」
母は軽トラックに数箱のいちごを積んだ。
「もしかすると雪になるかもしれないって」
私も空を見上げた。
「お父さんはもう少ししたら、全部のハウスを閉めて帰ってくるって。先に帰ろう」
「うん」
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