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義父母が帰ったその夜。
もうすぐ夜中になるという時間、私はお腹の張りとお尻のあたりに不快感を感じ、目をさました。
腰のあたりにものすごい違和感がある。出血しているみたいだ。
それは今までの少しだけ出血していたなんてもんじゃなかった。
まるで生理が始まった、そんな出血だ。
そんなことは絶対に起こってはいけないはずだ。
けど、お腹の張りと痛みはまさしく生理痛。
私はトイレに入って、その出血量に茫然としていた。
もう終わったと感じていた。
真っ赤に染まる便器。
もうどうしようもないことになっていた。
「だって・・・・、安定期だって・・・・。悪阻なかったし・・・・」
そう、それを言ったのは義母。けど、義母は悪くない。
出血が続いていることは言ってなかったのだ。誰でもそう思うはず。
けど、同じ産院で聞いたことのある話。
水を飲んでも吐いてしまうほどひどかった悪阻が、嘘のようになくなったんだって。
それは赤ちゃんがだめになっちゃったってことらしいと。
「ってことは、そうだったんだ」
ぽっとんと一際音を立てて落ちるものがあった。
私はそっとトイレから出て、台所から小さなタッパーを手にした。
それはおそらく、アレだ。
私は血だらけの便器からソレを拾った。
タッパーに入れ、蓋をした。
普通なら便器の中に手を入れることなんてできない。
でも、その血の中には航平と二人の育つはずだった赤ちゃんがいた。
あと半年もすれば、元気な泣き声をあげて生まれてきてくれるはずの赤ちゃんが入っている胎嚢だ。
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