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産院で待っている間、妊娠中の人向けの雑誌に目を通していた。
その中で、流産の記事を読んでいた。
その時、この胎嚢が確認できないと完全流産と言わないということだ。
私はまだ寝ている航平を起こした。
これは親としての二人の責任でもある。
「ねえ、私達の赤ちゃん、だめだった」
航平はさすがにすぐに目を覚ました。
「えっ、どういうこと?」
どうして突然、そんなことを言うのか理解できていないらしい。
「すごい出血だった。そして・・・・」
私は胎嚢のことを説明した。
航平はそのタッパーを遠い目で見ていた。
私にもそれをじっくりと見る勇気はなかった。
けれど、その中に赤ちゃんがいるということはわかった。
「ごめんね。産んであげられなかった・・・・」
そう言うのがやっとだった。
後は言葉にならない。涙があふれていた。
そのタッパーを抱きしめた。
航平も私に覆いかぶさるように抱きしめてくれた。
本当にごめんなさい。
そう、赤ちゃんに謝っていた。
あなたをこの手で抱きしめてあげられなかったこと。
せっかく私達の子供として授かったのに、ちゃんと守ってあげられなかった。
本当にごめんなさい。
そんなようなことを私は言葉にならないまま、航平の腕の中で何度も何度も繰り返していた。
航平もただ、何も言わず、私達を抱きしめてくれていた。
この瞬間だけが本当の家族だったのかもしれない。
妊娠、出産は女の仕事。本当にその通りだと思う。
けど、夫はその責任感と不安な気持ちの妻を支えることができる。
こうして、抱きしめてくれればそれでいい。
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