新聞配達の怪異

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 通いなれた家の玄関の前に立ち、インターホンを鳴らす。 「はぁい」    可愛らしい返事が聞こえた。  家から出て来たのは、まだ二十代くらいかな?  若い女性で、あのおじいちゃんのお孫さんかお孫さんのお嫁さんといった感じの人だった。  女性は、見ず知らずの男子高校生の突然の訪問に、とまどっているような感じだった。  けれど僕は、自分の足がこのままではどうにかなってしまいそうだという恐怖と、“おじいちゃんのせい”という事で頭が一杯で、そんな事気にもせず、「この家に、おじいちゃん住んでいましたよね?」と、挨拶もせずに勢いよく……下手したら喧嘩腰に言ってしまった。 「え?」と、ポカーンとする女性。  そりゃそうだよね。見ず知らずの僕が、単刀直入に切り出した言葉が、「おじいちゃんいましたよね?」だもん。  でも、その後の女性の返事に、今度は僕がビックリする番だったんだ。 「……あの。うちには、おじいちゃんもおばあちゃんも住んでいませんが?」  思わず、僕の方も「は?」って、なったね。 「い、いや! そんな訳ないですよ。僕、毎朝、朝刊渡してましたもん!」  訝しげな目で見る女性に、僕が配達している新聞をとっているか確認すると、確かにとっていると言う。  しかし、以前も今も、おじいちゃんなんて住んでおらず、この家には十年前から住んでいるけど、夫と自分と子供の四人しか居ないという。 「えぇ! でも、毎朝、僕は、手渡しで渡していたんですよ?」  最初は、疑いの目で見ていた女性も、あまりの僕の真剣な口調に、段々気味悪がって、「それって……お化け?」と、小さく呟いた。 「いや! でも、お化けになったのは、ここ数日で……それまでは、きちんと体もあって……」  僕は、しどろもどろになりながら今までの事を事細やかに説明した。
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