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おじいちゃんの住んでいない、このお宅。
勝手に敷地内に得体の知れない人が入り込んで、家主よりも早く新聞を読まれていたとしった女性は、当然、眉間に皺を寄せた。
「って事は、今まで、散歩か何かの途中で私の家の前で新聞を貰い、それを先に読んで、郵便受けに入れてたって事?」
「……ここに住んでいなかったとなると……そういう事に……なり、ますよ……ね」
「っやだ! 気持ち悪い!」
「あ! そ、そうですよね。僕も確認もせず……」
「あなたは悪くないわよ! そのじいさん、うちの門の中にいたんでしょう?」
「はぁ……」
「今まで、そんなじいさんが庭の中までとはいえ、平気で入り込んでたなんて……セキュリティきちんとしなくちゃ!」
話の方向がどんどんズレていくので、僕は、ここに居ても結局、あのおじいちゃんの事は分らないと思って、ただ、ひたすら謝って、その家を後にした。
それにしても、あのおじいちゃん……どういう事なんだろう?
あまりにも、おかしな行動を取っていた、おじいちゃん。
他人の家の庭で、朝早くから、朝刊を待ち、しかも、毎朝、僕の為に缶コーヒーまで持ってくる。
一体、何だったんだろう?
しかし、それよりも困ったのは、この足。
痛みや痺れを我慢していれば、なんとか歩けるものの、今日は体育の授業で走る事も出来ず、周りからも、「奇病じゃねぇの?」とまで言われた。
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