新聞配達の怪異

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 幽霊を見るだけなら、全然問題ないが、日常生活に支障をきたすような事だけは、やめてくれ。  そう思って、当分、新聞配達のバイトも、休ませてもらおうと、そのまま販売店まで行ったんだ。  そしたら、まぁ、販売店の店長が慌てだしちゃって。  五十過ぎの、小太りの人のいいおっちゃんなんだけど、その人が、額に汗を滲ませながら、「困るよ困るよ!」「休むだなんて……頼むよぉ!」とか焦っちゃって。 「僕がやれなくても、店長も、店長の息子も、普段から急病でバイトの人が休んだ時は、その分を配達してるんだから大丈夫でしょ?」って言ってやると、「あの区域で三か月以上もったの、君だけなんだから!」と言って、慌てて口を押さえて、顔を真っ青にすんの。  そんな反応されたら、誰だって、“何かある”と思うじゃん?  僕も、当然、店長に詰め寄ったよ。 「店長、あの区域は、誰も三か月持たないって……どういう事ですか?」  店長は目を右に左に動かして、もう、目が泳ぎまくり。  でも、僕だって、自分の足がかかってるんだから、必死に聞いた。  そしたらさ。  皆、口を揃えて、「あの区域だけは勘弁してください。出るんですよ……」と言うんだって。  いや。  僕の場合は、今まで幽霊もお化けも出ていなかったし、出るようになったのは、ごく最近だって事を話した訳よ。  そしたらさ、その店長、顔を真っ青にさせて、「それは……もしかして、〇〇さんのお宅?」って聞くのね。  あぁ!  そうそう。  その〇〇さんっていうのが、あのおじいちゃんが新聞を毎朝受け取っていた家ね。  で、僕がそうだと言うと、店長がガクガク震えだしちゃって。 「……その家で、毎朝……出てたんだよ……『足の無い、血だらけの老人』の幽霊が……」  僕は一瞬、頭の中が真っ白になったよ。
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