第1章

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「マ・マモール」                                     ――今年のクリスマスは俺の人生にとって忘れられない日となり、この日を境に俺の体は変化した。 「――線は人身事故の為、電車が遅延しております。大変ご迷惑をおかけして――。――」 「ええっと。ハダカムスメマモルさんはこの駅まで眠っている間に財布の中身を盗まれた、と?」 「ラコ。です」  12月25日。クリスマスで世の中が浮足立っている時期に、高校の帰り道に電車で眠り込んでいる間に財布の中身の札の数枚が盗られていることに気が付いた俺は、駅員が居る場所に駆け込むと、どこの線でなにが起こったのかよく聞き取れない駅員特有の独特な口調で喋っている構内アナウンスを聞き流しながら、案内されたカウンターで俺は書類に名前やら住所、紛失物やらを用紙に記入した。俺の書いた紙を読みあげる分厚いレンズのメガネをかけた初老の駅員は、俺が記入した用紙を目に近づけたり遠ざけたりしながら確認をとる。 「ハダカムスメさんの財布にはいくら程入っていたんですか?」 「ラコです」  慣れてしまってよく周りにからかわれるが、フリガナがふってあるのにこうして大きな声で名字を間違われると居心地が悪くなるどころか、不審者でも見るような視線が集まってくるから消えてしまいたい。 「ハダカムスメマモルさん、盗られたお札は何枚だったんですか?」 「……千円札が4枚と、5千円札が2枚です。小銭は無事でしたがお札は全部無くなっていました」 「わかりましたハダカムスメマモルさん。カード類はお持ちでしたか?」 「俺はまだ高1なので口座と繋がっているカードは持っていませんでしたし、ポイントカードも原付バイクの免許証も無事でした」 「わかりましたハダカムスメマモルさん。まぁ、盗まれたのがハダカムスメさんの現金だけというと戻ってくるケースはほぼ無いと思いますが、希望は捨てないでくださいね」 「……はい。ありがとうございました。……そのメガネ度が合っていないと思うっすよ」
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