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午前中までの天気が嘘みたい。
今、ぽつりぽつりと降り出した雨が、あたしを通り過ぎていく。
車の通りは少なく、見通しもいい。信号のない横断歩道の先は、木々が立ち並ぶ涼しげな通り。
振り返ると、翼くんがよく話してくれた雑貨屋さん。そして可愛らしい花屋さん。
「詩月」
「ごめん、お兄ちゃん。やっぱり翼くん、いないみたい」
「……うん。他も探してみるか?」
探してみようとは思うけれど、足が動かなかった。こうして話だけで知っていたお店が見られて、満足しちゃったのかな。
違う。
多分、会うのが怖い。あんなふうに告白の返事もしないで別れたこと……怒っているんじゃないかって。
あたしのこと、忘れてしまうんじゃないかって……。
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