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「詩月」
「……もう少しだけ待って」
「でも、お前……」
「あたしは、大丈夫だから」
ふと子供の頃を思い出す。あたし、花屋さんになりたかったんだ。
前にテレビで特集やっていて、すごく夢中で観たのを覚えてる。
花というより、花を買っていく人たちの表情が好き。誕生日かな、告白かな、記念日かな、お見舞いかなって。みんなの表情が豊かで、いきいきしていて。
そこに関われたらどんなに素敵なことだろうって思った。
誰かの幸せの手助けが出来る花屋さんって素敵だなって憧れた。
例えそれがお葬式だったとしても、誰かを送り出すという手助けには違いない。
あたしは勝手に歩き出して、花屋さんの前で止まる。
色とりどりの花に、可愛らしいラッピング。元気そうなお姉さんが働いていて、理想的な花屋さんだ。
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