ただいま、お兄ちゃん

5/20
前へ
/96ページ
次へ
――――  今も思い出す。最期の日。  あたしは病気で、その日がいつかはくるって思っていた。思っていたけれど、それは突然やってきた。  中学生なのに制服はほとんど着たことがなくて、それが悔しいってお兄ちゃんにぼやいたことがある。  きっと、そんなあたしのために用意してくれたんだよね。  気を失って、1度だけ目覚めたあたし。  布団の上に掛けられた制服。  みんなの笑顔と涙。  まるで卒業式みたいだなって、勝手に想像していた。  次に寝たら、きっともうお別れなんだろうなって。  だから、本当は喋りたかった。  ちゃんと伝えようとしたんだよ。
/96ページ

最初のコメントを投稿しよう!

198人が本棚に入れています
本棚に追加