ただいま、お兄ちゃん

6/20
前へ
/96ページ
次へ
『お兄……っ』  でも、駄目だって思いとどまった。  お兄ちゃんを縛り付けるなんて出来ない。あたしは死んでも、お兄ちゃんはこれから生きていく人なんだから。  あたしは、言葉を飲み込むしかなかった。  だけど、今回だけは言わせて。  ねえ、お兄ちゃん。あたし、こんな姿だけど言わせて欲しいの。 「ねえ、お兄ちゃん」  椅子に立って、真新しいロープを首に巻き付けるお兄ちゃんをあたしは睨んだ。 「なにをしてるの?」  見事に固まってしまった兄は、あたしを見てはいるけれどかなり動揺している。
/96ページ

最初のコメントを投稿しよう!

198人が本棚に入れています
本棚に追加