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“誰かがついてきている” そんなことを思うようになったのは数週間前からだ。 毎日というわけではないけれど、背後……数メートル後ろ?……から、スニーカーのような足音が聞こえる。 数日前には、怖くてバッグからスマホを取り出そうと立ち止まった時、その足音もピタ…と止んで、余計に怖くなり、自宅までダッシュしてしまった。 この町で暮らし始めてからお付き合いした人はいないし、思い当たることは何もない。 勤めている会社は家電製品のメーカーのコールセンターで、男性のイザコザらしいことも何もない。 実際に嫌がらせされたりという実害はないし、ある事情のせいもあって警察に届け出るのはちょっとだけ躊躇っている。 今日も………なのかな…。 そんな不安を抱えながら、自宅近くのバス停で降りた。 帰り道の途中にある、いつも寄るコンビニで、夕食のサラダとお湯を注ぐだけのスープを買って、顔見知りになった店員のヨコヤマ君と少しだけ話しをして、 そして、自宅までの道を恐る恐る歩き出した。
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