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「仕事?」
多田野さんが目を丸くした。
「依頼?」
雅文も中身の多くはない脳内で必死に考えようとしている。
「はい」
「どのような…用件…で?」
オレもオレで、ヨコヤマの野郎の件で何かあったのかとか、良くない考えで少し震える。
少しずつ歩み寄った目の前の彼女。
「あの……」
俯いてポッと頬を赤らめた。
「悪い虫がつかないようにそばにいて欲しいんです…園部さっ……あっ!」
話の途中の彼女を勢いよく抱き寄せて、腕の中に収めた。
「それでしたら、お任せ……ください…」
「ありがとうございます…」
「支払いはー?どーすんの?」
「そーだそーだ!」
二人の野次を聞いた彼女は、オレの胸をクッと押して小さく背伸びをすると、オレの唇に触れるだけのキスをした。
「………!?」
「これで…足りますか?」
「いや…それじゃ…1時間分ってとこだな…」
多田野さんと雅文がいるのも気に留めずに、彼女の顎を上に向けてもう一度、今度はちょい大人のキスをした。
柔らかな彼女の唇をじっくりゆっくり堪能していると、
「えーコホン………お二人さん…?」
「さっさと帰って好きなだけ続きをシて!」
二人の咳払いや野次が聞こえる中で、
腕の中に閉じ込めた彼女の耳元で囁いた…
「貴女のご依頼は確かにお引き受けしました……貴女を守ります……これからもずっと…」
*完*
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