一章

2/6
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
夏特有の暑さで体が汗ばむ。 少し前から夏休みに突入して今歩く街には出歩く学生や若者が沢山見受けられる。 皆楽しそうな雰囲気から遊びに来てるんだなって思う。僕?僕は違う。 中3の夏。偏差値の高い高校に行くためにこの夏休みは勉強に尽くさないとならない。 通う塾に僕の友達は居ないからいつも1人で授業を受けている。 今日から1日授業になるため昼御飯も1人になるのかと思うとげんなりとしてしまう。 塾の近くにさしかかると同じ塾の生徒なのか黒髪のツインテールの女の子が僕の目の前を歩いていた。 そしてその子の鞄から白いハンカチが僕の前に落ちる。 「あの...落としましたよ」 僕が声をかけると彼女は振り向きこっちを見る。 髪を払い見える顔に僕は見覚えがあった。 「あ、ありがとう。...あなたもしかして??塾に通ってる人ですか?」 「ん?そうだけど」 「そっか♪じゃあ私は先行って席をとってますね」 俺が答える前に彼女は走っていった。名前も知らない女の子だけどあの子に重ねてしまう。 もしかして...。 「って何考えてんだよ...。そんな筈ないのに。 一番分かってるのは僕なのに」 そうもうあの子は死んでる。あの子の死に顔も葬式も出たんだ。もうこの世に存在しないんだと。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!