新人研修の思い出~聴覚障害の女性との出会い~

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 それにA子さんにしてみれば、私みたいな健常者いっぱい出会って来たと思います。ハシカみたいなボランティア精神でどこか勘違いしている男いっぱい出会ったと思います。  A子さんはフツーの女の子だったのです。今までに私を「いい人」にしてしまう女性となんら変わりない。障害があっても、元気で明るいその辺の女の子と同じだったのです。フラれたのは残念でしたけど、そう考えることが出来て少しホッとしました。  やがて楽しかった研修も終わり私は神戸に配属になりました。最初、仕事が全然わかりませんでした。研修で学んだことは何も役立ちませんでした。誰もまともに仕事を教えてくれません。何にもさせてもらえず肩身の狭い思いをしていました。毎日が嫌で嫌でたまりませんでした。  これじゃいけないと思って私は、先輩たちの会話にいつも聞き耳立てて少しでも仕事が覚えられるように頑張りました。  仕事は丁稚奉公みたいなことで学んで行くということがあると思います。板前の見習いが残飯を拾って食べて師匠の味を学んで行くような。研修で学ぶ以上の「何か」を理解しなければならなかったのです。
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