新人研修の思い出～聴覚障害の女性との出会い～

　Ａ子さんが手話サークルにお誘ってくれた時のことは強烈に記憶に残っています。休みの日に寮に電話があったのです。勿論、Ａ子さんは電話ができませんので、同じ同期の女性に頼んで伝えて来たのです。研修の休み時間に言ってくれればいいのに。なんて健気なんだろうと思いました。

　その手話サークルは渋谷から井の頭線に乗って二駅、三軒茶屋にあったと思います。渋谷で待ち合わせをして、切符を買う時、ちょっと驚いたことがありました。Ａ子さんが「これ使って」って定期券差し出すのです。私は突然のことでわけもわからずその定期券を使わせてもらい、Ａ子さんは切符を買って電車に乗りました。あとで気付いたのですが障害者は定期券も切符も半額なのです。

　悪いヤツです。私も共犯ですけど（もう時効ですよね？）私にはそんな行為がものすごく不思議に感じました。テレビに出てくる障害者はみんな善人で、観ている私ら健常者は感動したりします。「自分も頑張らなきゃ！」と。ですけど彼女は障害者であることを悪用するのです。