本屋さんとウス異本

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「これに絵を描いたらどうかと思って。お姉さんの気まぐれだから、遠慮なく受け取ってちょうだい。タダであげるから」 「参考書だけで充分ですよ。絵なんて描けませんし」 「アナタ、口では興味なさげにしているけれど、漫画に興味津々なのが態度でバレバレよ。ご両親に気が引けると言うんだったら、自分で絵を描いてみなさいな。自分で描いた絵まで禁止すると言うのなら、それはご両親が悪いから」 「でも、なにをかけばいいか」 「小説ならOKなのでしょう? だったら読んだ本の登場人物やシーンを描いてみると良いわね。何事も描いてみることが肝心よ。でもこれはお姉さんのワガママみたいなものだから、絵とか興味ないっていうならそのノートは好きなことに使いなさい。その名の通り、それは自由帳なんだし」 「じゃあこれ、もらっていきます」  少女は参考書の代金を読子に支払うと帰って行った。  このとき渡したノートの中には大学時代に読子が描いた四ページのペーパー本が折りたたんで挟んでおり、そこに「続きが読みたくなったら声をかけてね」とメモを添えていた。  その後その少女と読子が出会うことはなかった。少なくとも読子はそう認識していた。 「えっと……あったあった」 「その本がどうかしたんすか?」     
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