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本屋さんとウス異本
本屋さんとはその名の通り本を売る店である。
人魚書店は大学委託の教科書だけではなく、コミック雑誌文芸本なども一通り揃えている。
店の規模が大きくないため教科書以外は既刊の取りそろえが少ないのが玉に瑕だが種類には自信がある。
その中でも目を引くコーナーがこの店にはあった。
「同人誌?」
棚の整理をしていた一郎はコーナーの見出しに小首を傾げた。たまに漫画でネタにしているのは知っているが、一郎はこの手の本は詳しくないからだ。
「店長って大学の漫研OBだから、そのツテで置いているんだって」
「そうなんですか。そう言えば店長って絵が上手かったなあ」
これはこの薄い本にまつわる小話である。
溯ること八年前、とあるアニメにハマっていた読子はパソコンの前に座って筆を執っていた。
大学時代からの癖で継続して絵は描いていたものの、本気で一冊の漫画にしようと筆を握ったのは久しぶりだった。
モノクルをかけた短髪の執事が主役のこのアニメ、読子は知らずにある人の姿を主人公に重ねていた。
「グレイスンと宿敵ジェームスの戦い、どんな風にしようかなあ」
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