第1話 斬首の森

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午前中は青空も見えていたのに、午後に なると雷を伴い、黒雲が天を覆ったかと 思うと、大粒の雨が降り出してきていた。 僕は、自宅のマンションから、下界の 光景を目撃する。 コンクリートやアスファルトが水に 濡れながら、それぞれの色を変えていく。 傘を持たない人々が、小走りで先を急ぐ。 この景色はいつまで続いていくのだろう、 僕の心をとことん憂鬱にさせる。 天も地も全てが灰色、僕の身体も石灰に。 僕が住んでいる自宅は、15階建て マンションの最上階。 目の前には、スカイツリーや晴れた日には 富士山も垣間見える。 僕は無職だ、産まれてこのかた一度も 就職をしたことがない。 生活は、両親が残してくれたアパートと マンションの家賃収入によって、 生活の糧を得ている。 両親は不動産経営をしていたのだが、 交通事故によって2人とも亡くなって しまった。 母が社長で父は副社長ながら、順調に 成長していた会社だ。 2人が得意先へ車を走らせていた時、 悲劇は起きた。 首都高を走っていた両親の車が渋滞で停車 していたところ、後ろから走って来た 居眠り運転の大型トラックに衝突され、 後部が潰れた瞬間炎に包まれ大炎上。 一瞬にして、両親は死んでしまった。 僕が、高校2年の17歳の時だった。 病院で観た両親の遺体は、真っ黒に 炭化していた。 それを見た僕は不思議と涙が出なかった、 それは悪夢としか自覚出来なかったからだ。 悪い夢を見ているようで目の前の現実を 直視出来ない、夢なら早く覚めて欲しい 僕はそればかり願っていた。 いつの間にか、僕の潜在意識の中で深い 暗闇が死神のように支配してきたのだ。
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