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どんなに思い返しても、記憶にない名前。
(突然、貴方は新事業を始めると言いだし、
私から大金を借りたうえに、嫁入り前の
私の身体を弄びました)
「人違いでは?君との接点は
何処にも無い!」
(ラブホテルのベッドの上で、貴方は
優しく私を抱いてくれました)
バンッ!!
思わず僕は、机の上を片手で強打
してしまった。
「本当に君とは、一度も会ってないんだ」
馬鹿にしてるのかこいつは!悪戯にも
程がある。少々感情的になってしまった。
「坂崎ユリア・・・」
思い出そうとしても思い出せない、
それから暫く経ってメールは途絶えた。
ホッとすると同時にふと気がつくと、
外では激しい大雨になっている。
神経質者の特徴だろうか、余計なストレス
が重くのしかかり、全身にアドレナリンが
走り出す。
この事実は、僕みたいに華奢な人間には
辛い。
気持ちを落ち着けようとキッチンルームに
行って、紙コップコーヒーにケトルからの
お湯を注ぐと、コーヒー特有の香ばしい
匂いが鼻をつく。
「なんて良い香りなんだ、全てのストレス
から解放されるようだ」
インスタントコーヒーでも、コーヒーと
ワインに目がない僕にとって、
このうえない喜び。
ピンポーン!
一口啜ったところ、いきなり玄関の
インターフォンが鳴った。
「はい!」
ビクッとしながら玄関の所に行きドアを
開けると、外にはずぶ濡れになった
女が立っている。
女はずっと恨めしそうに僕の顔を観る、
女というよりまだあどけなさの残る
少女だ。
それよりも何故だか、背中に悪寒が走る。
「あなたは?」
驚きと共に、ビビリながら訊くと。
『ワタシ、坂崎ユリア』
「君がユリア!どうして僕のマンションが
分かったの?」
『鬼女に調べて貰いました』
「鬼女って・・・なに?」
僕もこの時は聞いた事もない言葉だった、
少女は沈黙を保ったままその場に
立ち尽くしている。
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