第一章 オフィスの罠

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「失礼します」  頼まれた用事が終わり、書類を手に戻ってきた未咲は、ノックして、専務の部屋に入る。  一課の秘書の佐々木は今は居ないようだった。 「専務。  お使い終わりました」 と言うと、 「お使いってなんだ。  幼稚園児か」 と言いながら、智久は書類の入ったクリアファイルを受け取ると、眼鏡を外して、デスクに置いた。  未咲がそれをじっと見ているのに気づき、なんだ? と言う。 「いえ、最初に会ったときも、眼鏡かけてましたよね。  かけたり外したりしてるけど、老眼ですか?」 「……殺そうか」  思ったままを口に出すのは、そろそろやめた方がいいらしい、と未咲は思った。
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