第一章 オフィスの罠

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 ああ、そうですか、としか言いようがない答えだ。 「そうですか。  で、なんで、二千万だったんですか?」 「余ってたからだ、ちょうど」 「は?」 「ちょうど、端数の二千万を何処に移そうかと思ってたところだったから」  ……二千万が端数というのが、意味不明なんですが。 「このまま此処に居て、貴方の話を聞いていたら、頭がおかしくなりそうなので、失礼します」 と未咲は丁寧に頭を下げ、行こうとした。  その背に向かい、智久が問うてきた。 「お前、ほんとに夏目と結婚する気か」 「まだわかりませんけど」 と言うと、 「まあ、それも面白いけどな」 と笑う。  人の結婚を面白いとか、相変わらずだな~と渋い顔をしていると、智久はふいに思いついたように言った。
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