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後ろを歩く、世界の裏側の人
初冬。
場所は日本では北国と呼ばれている地域。
ホテルから出てきた俺達の目に飛び込んできたものは、この冬になって初めての雪だった。
乾燥した空気ではある。だけど同時に澄んだ空気でもあった。
少しだけ良い気分になる。火照った自分の体には、これくらいが丁度いい。
「……寒いですね」
後ろにいる少女が口を開いた。
「……あぁ」
俺はそう言って両手に息を吹きかける。
本当は別に寒く無い。
「あの」
再び少女が口を開く。
「ん?」
「その……つ……ま……んか?」
「……何?」
「手……」
「手?」
「……手、繋ぎませんか?」
「……」
別に拒否する理由も必要も無い。
……無いはずだのだが……
「いや」
そして、繋ぐ理由も、また無い。
無いと、自分に言い聞かせる。
「そ……そっか……あ、別に気にしないでくださいね。なんか……すみません」
「……別に」
少女は何故謝ったのか。俺には理解できない。
少女は照れくさそうに、差し出しかけていた左手をそっと体の背に引っ込め、うつむきながら喋らなくなった。
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