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ゆっくりとドアを開ける。
すると、茹だる空気がオレの表面を取り巻くより先に、スニーカーの爪先がドアの隙間にガッと無遠慮に入ってきて、
まあ言うなればそれがゴング。
物凄い力に引っ張られるドアノブを即座に手放す。
勢い余って左側の壁に激突するドア。
お陰で視界が広がり、無所属のアルファ三人目視で確認。
くんかくんかと鼻を動かす理性を失ったこいつらは、オレ、イコールオメガの敵。
速攻でオレに乗っかかろうとしてきた一人目の股間をゴッと蹴り上げ、
沈んだ後ろから勢い良く落ちてきたバットを、なんとか左で弾き右フック。
でも右手使った直後、更に右側から襲い掛かってきた一人にギョッとした。
(隠れてやがった…!)
全部で四人か、と油断を省みた瞬間、
左に大きく開けたドアに邪魔されていたデカいモンスターも同時に乗っかってきて、
二匹が、尻餅ついたオレの首元で大きく口を開けた。
「ッ薬師!!」
声より早く。
ニュッと出てきた大きな手が、そいつらの髪を鷲掴んだ。
ガッと勢いその頭を毟り上げる。
外部からの猛威的な力に反れた汚ねえ喉仏。
そこから悲鳴のような息が漏れ、
上からは低く、地を這うような声が鳴った。
「…誰の首を狙ってやがる」
「……ぁ」
「…お前らが、手ぇ出していい相手じゃねえぞコラ」
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