1・ぴこんと電波受信オレのムスコ!

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... 「…なんですかねえ、あいつらは…」 やっと落ち着き、事務所のソファのオレの定位置にドカリと座る。 ゼンが熱い緑茶を入れて来てくれた。 その眉毛が真ん中に寄っている。 「オレなんかは平凡なベータなんでわかんないんすけど、アルファっていや社長クラスじゃないすか。 なんで昼間っからあんなウロウロしてるんすかねえ、あの人たちは」 「社長になれるやつばっかじゃねえんじゃねえの?」 随分湯呑みを揺らして冷やしたつもりだったけど、口を近付けるとちょっと恐怖。 あっつい湯気がモアーッとオレの顔を襲ってきやがる。 「ゼン、お前これ、熱湯じゃねえか! 飲めねえぞ!」 「あ、フーフーします?」 「ふざけんな、氷入れてこい!」 「へーい」 やっすいアパートの二階のこの部屋は、風呂付便所付の1LDK。 もともとリビングも仮眠室も畳だったのを、土足でもいいようにフローリングに張り替えた。 何かあったらすぐ外へ出られるようにだ。 この建物にはセキュリティなんか何もない。 だからアルファ野郎がすぐに群がってくるけど、 ボロ過ぎて他に借り手のないところと、場所がシマの真ん中ってところがいいところ。 さっきみたいに騒ぎを起こしても、下や隣が居ないから案外大事には至らない。 ま、近辺住民には目を瞑って貰ってるけど、 代わりにこの界隈で悪さする奴らもいなくなったし、ギブアンドテイクは上手く行っていると思う。 .
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