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「でも生まれつき能力はあるわけでしょ? 勿体ないっすねえ」
言いながら、氷を一個だけ浮かべた湯呑みをオレに差し出した。
それを受け取りながらオレも会話を返す。
「まあな。 つうか大抵のアルファはこんなオメガフェロモンにやられないよう対策はしてるわな。 アルファでも社長になれない理由はそこなんじゃねえか?」
「ああ、アルファでもバカがいるってことっすね?」
「そういう事」
湯呑みに口を付けながら答えた。
今度は飲める。
「現に薬師さんはアルファでもあんな我を忘れるようなことはないっすもんね。 さすがうちの若頭っす」
とゼンが鼻息を荒くしていると、薬師がちょうどトイレから帰ってきた。
「終わったか」
「…すんません、長くて」
「いやいいよ、オレの所為だし」
「……」
アルファの発情中の射精は長い。
薬師はオレが発情すると、オレの匂いに流されないよう、すぐ自分に抑制剤を打つ。
発情期のオレを守るためだ。
発情したオレの体は、立つことすらままならないからだ。
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