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発情期明け。
遅い昼飯食いに、薬師とヨッシー連れて先々代のラーメン屋に行った。
古いわりに店の軽い引き戸をガラリと開け、店内の客が少ないことを確認してから声を発する。
「じっちゃ、久しく」
「おー、フジオ、一週間振りか!」
鉢巻巻いたつるっぱげの先々代がカウンターの中、満面の笑顔で出迎える。
先々代は、引退と同時にここの土地と店舗を買い取った。
つうかこの場所は、どんな店が構えてもすぐ店仕舞いになるという曰くつきの土地。
それを知っていながら、自分の運を試したいと店舗込みで買い取って上手く回してるじっちゃは、やっぱりアルファだなと思う。
「ゼンはちゃんと仕事してるか」
言いながら、一組だけの客をチラリと見た。
店の一番奥にオレと同年代くらいのカップル。コソリとこっちを見てる。
じっちゃが言った。
「いつも通り要領悪いけどな、客とは上手くやってるよ。 今日も小遣い貰いやがった」
「え、ゼン、誰に貰ったんだよ」
交替でバイトに来てるチビのヨッシーが、オレの隣で口を尖らせると、
同じく鉢巻巻いた太っちょのゼンがイシシと厭らしく笑った。
「ソープの牧口さんだよ」
「いくら?」
「五千」
「うっそマジで!?」
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