突然の別れと突然の家族

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もやもやする………。 私───高坂千色(コウサカチイロ)は胸の下で組んだ手を組み換え、目の前で困り顔した男を睨みつけた。 「だから、千色の誤解だって・・・」 う~んと肩を竦め、恋人の紘太(コウタ)は溜息混じりに吐き出した。 「でも私見たもん」 「見間違いだろ?」 「襟に赤いラインの入った紺色のポロシャツに、この前買ったばかりのベージュのパンツ」 「・・・・・・」 「紘太のお気に入りの組み合わせ」 「・・・・・・」 「それに私が紘太を見間違えるはずない、でしょう?」 黙りこんだ紘太を横目に、私は昨日見た光景を思い出した。 一泊で青森出張と言って早朝スーツ姿で部屋を出て行った紘太が、その日のお昼には隣駅にいた。 3時間ほどで青森を往復し、商談を済ませることが出来るなんて。 さすがはE5系はやぶさ。 国内最速新幹線は違うなぁ! いや、新幹線もさながら、やっぱり紘太は仕事のデキル男なのね。 さすがは我が恋人♪ ・・・って、オイ! と自分にノリ突っ込み入れたくらい信じがたい光景だったのだ。 だって綺麗系の女性と腕を組んで。 更に照れたように微笑み合ったりして。 どう見てもラブラブカップルみたいにして歩いているんだもん。 私だって見間違いだって思いたかった。 他人の空似だって思いたかった。 でも、私が今一番大好きな彼氏の紘太を見間違えるはずはない。 それに・・・。 「・・・涼子(リョウコ)さんだった」 そしてその隣の女の人だって、私が見間違える人じゃない。 さらさらとした長い髪に、長身でスレンダーな身体。 少し派手目の顔立ちだから薄化粧でも普通に美人で。 だから、私が涼子さんも見間違えるはずない。 だって──── 私も何回か顔を合わせたことのある涼子さんは紘太と同じ会社の同期で・・・ 紘太の元カノ。 私の前に付き合っていた、紘太の彼女なんだもの。
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