序章 シフォンカフェ リュミエール

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とある古民家の玄関に、手作りの小さな木製看板が掲げられている。そこには、小枝を切ってつなげて「シフォンカフェ リュミエール」と書かれていた。その足元には、季節のシフォンケーキとランチ、コーヒー、紅茶がそれぞれ書かれた小さな長方形の黒板があった。 和風な古民家にカフェ、とは不思議に思って引き戸を開けると、まずは土間に迎えられる。カランカラン、という、ちょっと昔の喫茶店のようなベルの音に、奥の部屋から茶色のエプロンをした女が出てきた。 「いらっしゃいませ。おひとり様ですか?」 奥からもう一人、同じエプロンをした女がちらりと顔を出し、小さく、 「いらっしゃいませ」 と呟いてまた戻っていった。二人の顔は、よく似ていた。 「こちらへどうぞ」 これが、シフォンカフェ リュミエールとの出会いだった。
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